静岡わかものフェスタ 木下勇氏 質疑応答

 子ども・若者に優しいまちはなぜ必要なのか?

静岡わかものフェスタで講演をしていただいた木下勇先生(千葉大学 教授)から、会の中で答えきることができなかった質問についての回答をいただきました。

ありがとうございます。

 

Q 子どものための町づくりは、次世代の若者を育てるためなのか、若い意見を取り入れたいのか、どちらなのか?

Aどちらかということではなく、若い意見を取り入れることは次世代の若者が育つことになる。

 

Q一番すごいと思った子ども達の活動は?

A海外ではインドネシアの子どもフォーラム 各村(都市部では自治会、町内会)単位であり、元ドラッグづけの少年が子どもフォーラムの代表に後になってドラッグ撲滅の運動を展開したり、貧しい島の出身の女の子が、市町村代表、州代表、国代表の子どもフォーラムの委員としてASEANの子ども・若者に関する課題に取組み、国際会議で発表している姿。16歳の女子が聴衆を感動させる講演を行い、その前に行なった私たちの講演がかすんでしまった。

 

Qインドネシアの人口構成(子どもと年寄りの比率は?) 発展途上国であるからこそ大統領になれたのか?

A15歳以下の人口の割合はインドネシア27% 60歳以上は8%と完全なピラミッド構造

逆に日本は15歳以下13%、60歳以上30% の逆ピラミッド (いずれもWHOの国際比較のデータより。)

しかし、発展途上国であるからこそ大統領になれたのではなく、インドネシアはこれまで、スカルノ、スハルトとマーシャル法による統制、独裁政権の経験を経て、民主化されてまもなく、メガワティ、ユドヨノ政権までは富裕層がトップについていた。ウィドト氏になって初めて、庶民層から国のトップになり、現在、さまざまな利権がらみだった政治を変えようと努力しているが議会はじめ、なかなか抵抗の壁は厚く、路線をゆるめながらも変革に取り組んでいる。

途上国は途上国なりに理不尽な政治の世界もあり、彼が大統領になれたのは途上国だからではなく、庶民にとっての政策を展開してきたから。

 

Q子どもが大人を評価する理由

A子どもが審査委員の「子どもにやさしい市民」の審査や「子どもにやさしい住宅地」など、大人の活動を子どもが審査することかと思いますが、子どもの目線は大人と異なることに大人が気がつく、子どもも責任を持った審査を行なうことで、自分たちの周りの環境に対するより理解を深めて、当事者意識、主体性が育まれる。

 

Qどういう地域で子どもの参画がすすむのか?(条件とか)

A子どもの参画を理解している大人が居て、サポートする大人が居るところ。特に自治体の長や幹部、またはNPOはじめ市民活動団体で子どもの参画に熱心に取り組む団体がいる所。

 

Q子どもの社会進出の際の教育機関との連携は?

Aフォーマルな教育機関はなかなか難しい、学校教育のプログラムで先生達もいっぱい。学校と連携する地域に主体がある、インフォーマルな教育の場、またフリースクール等のノンフォーマルな教育の場の方に連携の可能性がある。

 

Q「社会を変えられない」との意識を変革するきっかけをどう提供するか。

Aまずは小さなことがらからでも取組み、自分の力で変えられることができたという実感を得る経験が大事。(フランスの就学前の子どもの参画を推進しているユニセフフランスの方から聞いた言葉)

 

Q足元でできる取組みは?

A私も自分の住んでいる町で取り組んでいるが、身近な課題や資源に、子どもとともに楽しくできるプログラムを考えること。課題、資源を並べて、思わぬ組み合わせで楽しい取組みを発想するゲームを仲間で行なってみるのもよい。

 

Q本当に参画になっているのか?

Aロジャー・ハートの参画の梯子の1〜3段の見せかけ、形だけ、操りなどの本当の参画になっていないのは日本ではまだ多く見られます。たしかに日本の子どもたちは忙しく、企画段階から参画する子どもを集めるのもたいへんで、イベントのお客様になりがち。しかし少人数でも一緒に大人、学生と企画する面白さにのめりこむ子どもたちも居る。そういう中で、子どもから子どもへと企画に加わる子どもが増えてくるとよい。子どもたちのグループにある程度ミッションを渡して、信頼して、企画してみることをすすめるなかで、はりきって思わぬ力を発揮することがあります。

 

Q若者のためにって思い続けるには?

A若者のためにって思うのではなく、それが自分のためにもなり、社会のためにもなり、社会を変えていく自分の主体的行為と思うこと、というのが真面目な回答としたら、「自分のため」は面白さの追求。面白いことをやってみたい好奇心。

 

Qこういう活動って大人が中心だとダメ?

Aそんなことはなく大人が最初は中心でも、面白いことを自分たちで行なっている中で、若者、子どもでもその面白さが共有できる、そういう面白い活動ならよいのでは。大人中心から子ども中心にプロセスで渡して行ければよい。

 

Qなぜ若者が街づくりに参画することに興味を持ったのか?

A学生時代に欧州の冒険遊び場の運営会議に子ども若者が参画していたり、遊びの運営資金削減に対して、子どもたちも街頭デモをしていたり、子ども・若者センターの運営に子どもたちが参画したり、道路づくりに子どもが参画している現場を見てから。

 

Q若い時に何に関わっていたのか?

A学生時代の4年生あたりから世田谷のボランティア活動、遊び場づくり運動に関わってから社会と接点。それまではボーとした学生だった。

 

Q静岡での取組み 子どもが住み易い街づくりに関して

もっと子どもが参画する街づくりを!

 

Q日本は規制が強いのでは?

たしかに規制だらけ。もっと子どもを自由に野に離して、自ら考え行動する機会と場を提供するべき。ロビンソン・クルーソーのように。

 

Q若者の社会参画に向けて大人は若者に何ができるのか?アプローチの方法は?

Aまず若者と向き合い、その心の奥にある言葉に耳を傾けること。そこで徐々に本音が語られる信頼関係を築き、そこでもっともなことを知れば、その思いを共に社会の変革に結びつける手助けをする。大きなことでなくても小さなことでも自分たちの力で変えることができたという経験をともに築いていくこと。

 

Q 30年前の女性の社会参画の動きとの共通点や違いは?

A共通点:今まで参画する権利が認められていない弱い立場の者にその権利を認める社会への変革はよほど強い主張が必要で、そういう意味では参加より参画という強めた言葉を使う方がアッピール力はある。また当事者の女性が自らその主体として社会変革を担い、その実態を見せることからその社会の意識変革に広げて行く長い時間を要する点。

違い:女性は選挙権があり、票になることから政治家にも支援者が、また女性自身が政治の舞台に進出し、変えていったこと。子どもはそういう面で政治の主役になれない点に大きな違いがある。18歳に選挙年齢を下げたが、これから被選挙年齢も欧州並みに下げていって、子ども・若者の代弁者を選出できるようになってくれば、政治にも影響力を与えてくるだろう。

 

Q世界で様々な活動をしていることも、日本でのこともよくわかりましたが、費用がかかります。日本人の気質や性格、状況的にどのようにしてお金を集めるのが有効だと思いますか?政治家が税金を集めても、使い道に不安を抱えている人は多いはずです・・・

A海外の方が日本で講演をされた時に、よく質問されるのがお金のことで、「なぜ日本人はお金のことを気にするのか」と逆に聞かれることがよくありました。どうも海外で運動を進めている人は必要なことをしていれば、お金は後からついてくるという感覚のようです。それは必要なことであれば、行政が補完したり(全部でなくても公的な事業に位置づくならば)、またはそうでなくても寄付をしてくれる人や企業が表れるから。ただ何もしないと集まりません。その事業がいかに公共的意味があるか、その必要性をアッピールする努力が欠かせません。それをパブリシティと言いますが日本では広報と訳されるのであまり重要と思われていませんが、「公共性の共有作業」とでもいうべき重要なことで、そちらの方に力点をもって、行政、企業、マスメディア含めて情報発信していくことです。ちなみにアメリカのNPOのマネージャー(大学出たてのたいへん若い女性)に聞いた時に、まず企業などにその問題が企業にも関連すること、イベントを企画してそれは必要なことだと相手が納得してから、では人を出してください、と交渉。人が出せないならお金をといって、最後に寄付を得ると言っていました。そういうように最初に問題の共有の関係をつくることが大事かと。たしかに日本では寄付の税控除が絞られている点などの制度的問題、そして寄付やボランティアの文化が根付いていない、そういう気質や文化、制度の違いありますが、そういう点も時間をかけて変えていくことかと思います。ただし全く西洋のようになる必要もなく、文化的には昔の村落共同体の相互扶助の仕組みがあるので、そういう精神文化的な面の「古いものを下敷きに新しいものをのせていく」変化が現実的かとも思います。

 

Q社会の定義を教えてほしい。

A社会は身近な社会、おおきな社会といくつもの層で見え方が変わってきます。国や世界となると漠然としてつかみどころがない、一般に社会と言っています。身近な地域社会ですと、町内会や自治会、または自治体ぐらいまでは具体的に見えます。日本ではもともと社会という言葉ではなく世間という言葉でした。そうしますと、家族以外の他人との人間関係で構成する世界、その諸々の事象というようなことでしょうか。社会学またはもっと広く社会科学の対象が自然科学と対置するぐらいの幅広い事象に広がることかと思います。

 

Qドイツの補完性の原理とは?

A小さいものができることを大きなものが邪魔してはいけない、小さいものができないことを大きなものが補完するという原理。中世のキリスト教の組織の関係の原理から、戦後はドイツの地方分権の原理となり、NPOとの協働の原理ともなっています。そしてEUのいろいろ経済的に強い国と弱い国、大きな国と小さな国の、様々な立場、状況の国が連携する大事な原理となっています。子どもと大人の関係でもこの原理を背景に、子育てでは子どもに「Selbst zu machen 自分でやりなさい」という自分で出来ることを自分でする教育が徹底されています。

 

Q子どもにやさしいまちをどのように考えているか

Q子ども・若者にやさしいまちはなぜ必要なのか?

A講演でお話しましたように、ユニセフの子どもにやさしいまちは、環境問題からの未来の世代への持続可能性と、子どもの権利条約を背景に1996年の国連人間居住会議から立ち上がったプログラムです。将来の事を考えると子ども、若者が主体として参画して意見を反映していくことが必要。

 

Q若者がまちづくりに参加すると地元に戻る率が高い、の詳細を教えてください。

A話した内容はまちづくりに参加すると、まちが好きという愛着心も高く、また将来もこのまちに住みたいという意識も高いという、意識レベルの調査結果で、まだ実態として戻ってきたかどうか、そこまでの時間が経過していないので断定ではなく類推で言ったことです。

 

 

 

 

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